「2020年度児童学科卒業論文発表会」を開催しました。

2021.02.10 お知らせ

4年次による「児童学科卒業論文発表会」が行われました。

日時:令和3年2月4日(木) 9:00〜17:15

会場:420講義室、504講義室、多目的ホール

新しい時代に求められる現代的課題とその可能性等

児童学科では「学びの精神を生活に活かせ」を合言葉に、日々の教育研究活動に取り組んできました。自らの研究テーマを見つけ、そのテーマと向き合ってきた4年間の49名の卒業論文発表会・集大成です。

今年度はコロナウィルス感染防止のため、サテライト会場を2箇所設置しての開催となりました。

熱心に「卒業論文発表会」に耳を傾ける在校生

論文の本質は「どのように生きるか」を問うことであり、「アイデンティティ」に関わることです。論文作成はこのことに関する自分との対話です。人生観・職業観・教育観などが基盤となります。


赤間文「認知過程に及ぼす色彩の影響」

①色彩情報にはどのような心理的効果があり感情に左右しているのか、②色彩に加えて材質の触感や面積の差で効果に変化があるのか、の2点を中心に色彩と感覚・知覚などの認知過程の関係について心理学における研究の知見について文献調査を行い、発達に伴い色彩の思考が変化する理由についても考察した。

(指導教員:小林 琢哉)

小笠原尚美「思考力を育てるにはどうすればよいか
〜思考ツールを用いた授業を視点として〜」

児童の思考力を高める指導法として、思考ツールを使用した指導が注目されている。そこで児童の「思考力」向上と「生きる力」の関係を明らかにした上で、思考ツールを活用した指導案を作成し、指導上の観点と留意点を明らかにした。

(指導教員:花田 裕)

斎藤緑香「制服に関する一考察
〜青森県を中心として〜」

制服は学校が定めたものだから、それを着用することが「当然」と考える人が多いと思います。この「当然」の妥当性を疑ってみることも必要だと思います。時代とともに社会の実情や人々の意識は変化します。また、青森での「当然」が、他の地域ではそうではないことがあります。「真に大切にすべきことは何か」自らに問うことが大切ではないでしょうか。

(指導教員:石戸谷 繁)

當麻玖実 「性的マイノリティ児童と学校生活」

最近になってテレビでも取り上げられていますが、一方で制度が追いついていないところがあるということを指摘した良い研究だと思います。学校現場で当事者および周囲の児童生徒にどう声をかけるか、今後実践例の集積が求められるところです。

(指導教員:小野 昇平)

土田有嬉「幼児期における音楽活動がもたらす情操への影響
〜弾き歌いの効果に着目して〜」

本研究では、保育現場で「弾き歌い」が頻繁に取り入れられている背景と教育的有用性について明らかにすることを目的とした。研究対象教材として「にじ」と「おもいでのアルバム」を取り上げ、主に旋律と伴奏譜の構造を分析するとともに、想起した曲想のイメージから解釈の幅を広げ、子どもたちの美的情操を養うための適切な弾き歌いのあり方を模索した。結論では、弾き歌いは真の有効な情操教育の原動力の一つとして捉えられていること、また、幼児教育において保育者自身による弾き歌い実践の重要性がより一層高まっていることを提起した。

(指導教員:一戸 智之)

成田想「聞こえない人にとっての音楽」

「障害の人にとっての音楽」に限らず、障害者について、健常者であれば通常楽しめる様々な文化芸術的な活動についても参加が妨げられているという状況を、障害者の権利実現の観点から捉えた興味深い研究だと思います。

(指導教員:小野 昇平)

鳴海紅羽 「幼児期におけるファンタジーの世界
〜サンタクロースに対する認識について〜」

幼児はサンタクロースをどのように認識しているのか、サンタクロースに対するイメージや体験を幼児にインタビューした。幼児期から大人になる過程でサンタクロースはどのような影響を与えているのか、どのような成長があるのか考察しまとめた研究である。

(指導教員:吉田 裕美子)

野澤のどか 「『暮らしの手帖』から本当の豊かさを学ぶ
~暮らしを支えてきた不易流行とは~」

溢れかえる情報やもの(商品)に振り回される自分に息苦しさを感じ、ただ便利なもの、情報があるだけでは「本当の豊かな生活」とは言えないのではないか。現代的課題、「本当の豊かさとは何か」「幸せとは何か」を『暮しの手帖』から考察し「幸せに生きる」ための意欲的な論文である。

(指導教員:岩井 康賴)

藤田瑠里 「トゥレット障害のある子への学習支援について」

「トゥレット障害」の症状の特徴や歴史、医学的支援・心理学的支援などの知見をふまえ、教育現場における教育的支援のあり方について考察した。トゥレット障害を持つ子どもたちが必要な支援を受け、生活しやすい社会にしていくには、この障害がより認知される必要があり、特別支援学校の「センター機能」を活用するこなどによって、まずは教員一人ひとりが理解を深めていくことが大切である。教員が正しい認識を持つことで、初めて周囲の子どもたちにも理解を求めることが可能であり、個別の支援計画に基づいた授業実践も十全に行っていくことができるのではないかと考えた。

(指導教員:斎藤 雅俊)


総論

今年度は新型コロナウィルス感染防止のため、本会場の他にサテライト会場を2か所設け、各会場の入場者数制限、マスク着用、手指の消毒の周知徹底を図り、万全の対策を講じて実施しました。

この1年間、様々な制約があり、研究が思うように進捗しない中、4年生はこれまでの学びの集大成として熱意を注いで卒業研究を完成させました。テーマは多岐にわたり、多角的な視点から研究の背景、目的や方法、内容、結論まで深く掘り下げて考え、画像や図表がわかりやすく盛り込まれたパワーポイントや配布資料を巧みに用いる等、創意工夫が凝らされ、様々な問題点と今後の課題が提起されました。

また、論理的な話し方や発表態度、プレゼンテーション力、質疑に対する応答の適切さから、4年生一人ひとりのスキルアップと社会性の向上を強く感じるとともに、1年生から3年生の学生にとっては、テーマをいかなるものにするのかを再検討し、各自が研究課題について熟考する絶好の機会となりました。

児童学科長 一戸 智之